しろくてまるいもの

ぬこが出刃包丁を持って俺のところに来た
「おっ、おかねをだせ」

「お金?いいよ、いくら?」
「にまんえん」
「二万円も?」
「固いおかねもいる」
「…何に使うの?」
「まぐろ。いっぱい買う」
 
…どうやら俺が彼女と出かけている間、弟がマグロを食べさせたらしい。
あの馬鹿野郎、何やってんだ。
 
「あと、しろいの。いっぱい」
「白いの?」
「しろくてまるいのも買う」
 
何てこった!ホタテじゃないか!
この調子だと、この先何を要求されるかわからない!
 
「わ、わかった。まずは包丁を置け、な」
飼い猫を相手におびえる俺。
「おかね」
両前足の肉球を俺に向けてくる。
仕方ないので財布の中身を握らせてやった。
 
俺の全財産を抱えて走る後ろ姿を見ながら、俺は弟の晩飯にカリカリを出すことを決めた。